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映画:かぐや姫の物語 感想
 年齢的におそらく最後の監督作品になるであろう、高畑監督の8年越しの大作。
 日本映画では破格にも程がある制作費50億円。こんなもんどうやってモトをとるんだというバケモノ作品。

 高畑監督はアニメ系の言説を追うと、宮崎駿の天才性が語られた後に「それでも一番スゴイのは高畑」と名前があがる事が多い。
 天才とも狂気とも取れる、尋常ならざる拘りを示すエピソード(ラッシュ完成後全部取り直すとか言い出す系)は枚挙に暇が無い。
 また、トトロを見に来た客を蛍の墓で地獄に突き落としたり、平成狸合戦ぽんぽこでタヌキがかわいいファミリームービーかなと思わせて、執拗にボディーブローカマしてきたりという、狂犬っぷりもハンパない。
 ホーホケキョとなりの山田君の何故今これを高畑が撮るのか、そしてなぜこんな内容で狂気がにじみ出るのか。そしてこの画面のスキマの使い方は凄いだろ、おかしいだろ。みたいな。

 自分には、そういうエピソードや作品からにじみ出るアレやコレやから、勝手な高畑像がある。
 それは、板垣恵介が描くジャイアント馬場像、アントニオ猪木像に似て、本人を示すわけではないのかもしれないが。
 だが、にこやかでやさしげな表情の裏に、狂気を飼っているタイプの人だと勝手に思っている。

 前置きはさておき、その「かぐや姫の物語」だ。
 ネタバレ全開でいくので、未見の方は読み飛ばしを推奨。
■お話
 日本人なら誰でも知っている竹取物語である。原本があるわけではなくもっとも古い文献も複数でブレているそうで、コレが本当のオリジナルというお話がどういうものかは定かでは無いらしい。
 高畑verは、大きなアレンジとして、捨丸という姫の田舎時代の兄貴分、淡い恋心の対象となるキャラを設定し、姫の内面を解りやすくしている。
 なぜ高貴な人の求婚を無理難題を吹っかけてソデにしたのか。どうして月に帰ることになったのか。
 自分の美貌(しかも見もされない)だけを理由に、本人の心と無関係に事が運ぶ。抗えない状況。
 そして月への帰還。

■個人的な感想
 姫の成長をじっくり描いているので、やたら長い。
 長い映像作品を見ると、もっとカットしろよとか思うクチだが、カットしてしまうとこの物語のテンポが成立しない。
 しかし、竹取物語なんて誰でも知っている話なのだから、知っている物語を追体験するのにこの長さはつらい。

 心情や細かい所作、当時の表現(着物の動きや扱われ方、木から椀を作る工程など)興味引くエッセンスが大量にあるので、その長さを感じさせない力はあるのだが。
 それでもやはり、2度3度と見るかと言われると長いからいいやと感じてしまう。

 また「姫の犯した罪と罰」というキャッチコピーは監督によるものではないが。
 それでも映画中、月の世界と地上との関係、姫がなぜ地上に来たか。など、触れるが踏み込まない描き方がされているので。
 そりゃ各自が独自解釈すりゃいいのは解るが、捨丸のようなキャラを作ってまでフォローした姫の心情に対して、舞台のタテツケには踏み込まないのかよ、というのはやはり残念に感じた。

■ボディーブロー
 正直、姫は面倒くさい女だ。男である自分はそう感じてしまう。
 しかし、姫は全く持って当たり前の主張をしているだけなのだ。彼女がが正しい。
 が、彼女が正しいと解っていても、面倒くさい女だと思わせるように描写されている。これはジワジワと嫌な気持ちになれる。
 翁は姫が好きで堪らないし、姫の為を思って行動しているが、彼が姫を追い込んでしまう。幼少時には本当に姫が好きで堪らないという描写が積み重ねられ、それが、彼が義務感として、姫を都で高貴な姫にするという方向に進み、姫を追い詰めてしまう。
 姫も翁と媼が好きで堪らない。期待を裏切れない。でも自分を殺せない。高貴な姫は、汗などかかぬ、歯を見せて笑わぬ。それでは人間ではない。という葛藤がある。
 葛藤の結果、月に帰らざるを得なくなる。

 ただ愛らしい子供時代の描写から 好意から発生するしかし好意とも限らない何かがジワジワと嫌な感じに絡めとられる描写が積み上げられる。

 翁はかぐや姫の心を理解せずに動く。
 媼は、翁を止めない。
 求婚者は、かぐや姫の心など気にしない。
 捨丸は家族を顧みない。
 帝はすべてが思い通りになると思っている。

 ロクな人間が一人も居ない。姫もたいがいだ。

 これが、竹取物語を再解釈したとか、アレンジしたとかではなく、ああそういう話であったのか。と思わせる感じなので流石の高畑節であるし、その手触りが嫌な感じなのも流石だと思う。

 とは言え、捨て丸と帝付近はかなりオリジナル解釈なので、賛否は分かれるだろう。

 あと、本当にこれは俺の性根が腐ってるんだけど、今更、「土着で喜怒哀楽を表現して生きるのは素晴らしい」なんてメッセージ聞いても、どうにもならない。
 そして、それが「成せませんでした。感情を消して月に戻ります。」というオチは皮肉ではあるけれども。
 そんなに鑑賞していて刺さる感じでは無かった。

■期待しすぎた
 最初に書いたように、高畑監督であるということにとても期待をしてしまっていた。その上50億円だ。
 どんなエゲツない映画になるのだろう。期待するなというのが無理だろう。
 高級料亭で凄いメシを食うような期待感。高揚感。

 さぁ食うぞ!そしたら最高の素材のご飯と漬物が出てきた感じ。

 旨いし凄いが、コレジャナイ。みたいな。

 画は凄いが、べつに木を植えた男が見たかったわけでもないし。
 と個人的には満足感に欠ける印象になった。
 複数の見方が出来るような構造になっているので、人によってはとても深く刺さると思う。

 例えば自分は子の親になったので、幼少時の姫の挙動がいちいち刺さる。
(ジブリ作品の男親のネグレクト度合いは毎度どうかと感じるが。必ず仕事で子供から目を離して行方不明だ)
 結婚を控えた女性などもかなり刺さるのではないか。

 社会が求めるロール(役割)に、異議を唱えるのは大変難しい。
 そこに異議を唱えた姫は月に帰ることになってしまう。

 この物語をどう捉えるか、どこを面白く見るかは、見る人に左右される懐の深さがあるのだろう。


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