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漫画:アイシールド21 感想
アイシールド21 (全37)
 長かった連載もついに終わる。コミックスがやっと出揃った。
 少年漫画として、非常にしっかりした漫画だった。
■お話
 弱小アメリカンフットボール部に入部した、ビビリの小市民小早川セナは、パシリで鍛えられた俊足を武器に、高校アメフトの決勝「クリスマスボール」を目指して奮闘する。
 その過程で多くの仲間、信頼できる先輩、強きライバルを得、フィールドでの戦士として成長する。

■マンガ表現として
 アメフトというわかりにくいスポーツを少年誌で解りやすく展開する為の工夫が多い。

 登場人物の強さパラメータが非常に単純化され解り易く扱われている。
 まず、足の速さ「40ヤード走n秒」というのを絶対の指針として描く。
 次に、パワーとして「ベンチプレスnキロ」「スクワットnキロ」上半身の強さ、下半身の強さの指針は、この二つ。
 これらの3つのパラメータで、大抵の選手の能力を説明してしまう。超高校級、プロレベル、高校記録保持者などの解りやすい単位つき。
 他、ポジションに応じて「ボール投げるまでにn秒」、「バック走40ヤードn秒」「キック60ヤード」「大会最多**」非常に単純化してわかり易く描かれる。ゲームのユニットの性能の説明のように。
 キン肉マンにおける超人パワー的だが、現実とリンクしている数字を持ってきたのは上手い。

 もう一つ、話を解り易くしているのに「**vs**」の使い方がある。
 例えば試合中、セナがボールを持って、パンサーを抜くか抜かれるかの瞬間「セナvsパンサー」等、レタリングした文字が大ゴマで描き込まれ、これから重要な勝負どころである事を示す。
 そこから早くて1コマ遅くても数ページでその決着はつく。大きい勝負の流れ以外にもそういった細かい単位の勝敗をピックアップする。
 「賊学vs泥門の不良」「栗田vs我王」など、主役以外のユニット同士の戦いも同じように示される。
 これは、言ってしまえば漫画なんてのは「勝った負けたの連続」でしかなくて「そういう風に割り切れば」これほど解り易い表現は無い。

 他にも。村田雄介という絵師の能力による物が大きいと思うが、キャラクタの見た目的な造形が非常にわかりやすい。
 コミックスのページ埋めに、各キャラクターの腕だけが描かれ、それが誰か解るか?というクイズがあるのだが、それができるほど、腕だけでわかるようにデザインされている。
 キャッチ力のある奴の手は指紋までかかれている、クォーターバックは指が長い、ラインバッカーは腕が長い、ラインはポパイのように前腕の方が上腕より太い。などキャラクター性とユニット性能と見た目の解りやすさはかなりのもの。
 アメフトという、ヘルメットを被ってプロテクターを着けてしまえば誰だかわからなくなるスポーツだけに、その辺に気を使ってあるのだろう。

 さらに。漫画的に不要と思われる描写はばっさりオミットしている。
 アメフトはタッチダウンすると、ボーナスゲームとして更に得点チャンスがあるのだけど、連載初期はそこに詳しく触れない。何かやってる程度で流す。
 これはボーナスゲームで重要なキッカーが泥門に居なかった為だが、どちらかというと話をシンプルにするため、まずキッカー無しで話を始め、物語の成熟にあわせボーナスゲームの説明、キッカーの重要性の説明と後追いで描写したのだろう。
 アメフトという、殆ど日本で馴染みの無いスポーツを扱うという欠点を、それゆえルールなんか誰も詳しく知らないから、描く場所オミットする場所を任意に取捨選択できる強みとして上手く生かしたのだろう。これがもし野球でキャッチャー不在で話が始められるかと言えば無理だし。
 大会ルール(3位まで決勝に進める)の引っ掛けや、インモーションを利用したトリックプレイなど、なじみが無い事を利用した展開は、異世界格闘漫画と同様の効果を生む。忍術解説がルール解説に置き換わった白土三平みたいなものか。

 ただ、本作でのバッサリ省略は良し悪しだと思う。
 最終スコアの具合から(キック失敗したな)等が読み取れる程度だったり、「一進一退の攻防の末、今何点差」程度の説明で済まされたりする。要するに細かい試合の機微はどうでもよくて「**vs**」で示される見所だけが重要視される描き方となっている。

■少年漫画的な限界
 部員2名で、1勝の経験も無い泥門高校アメフト部はセナの加入から回転し始め、春大会で1勝、冬大会で優勝となる。
 どう考えても無理がある。
 また、少年漫画的なハッタリをカマす際「こんなチームにどうやって勝つんだ」というエピソードが書かれる事が多いが、何故か「なんとなく勝ってしまう」これは読む側としてはツライ。
 例えば、最強の守備で知られる王城高校はその試合の序盤で強烈な連携と個人技能で泥門に迫るせまり、圧倒的な強さを見せ付ける。
 が、試合中特に大きな逆転要素の投入もなく、王城高校は普通に負ける。

 個人同士の戦いは、気持ちの問題が勝敗に影響を与える。「守る物が多いから強い」とか。いやもう、それは仕方が無いと思うんだけど。
 それでも、それって「イヤボーンの法則」とたいして変わらないので、物語をマジメに読もうとすると障害になる。(イヤボーンとは、70年代に多かった、女の子がピンチになってイヤー!と叫ぶと秘められた超能力が発動して敵がボーンとなって万事解決するというもの。サルまんで提唱された。)
 
 上記のような、リアリティの少なさが影響して、試合以外のエピソード、相撲編、体育祭編などはかなり無理があり、時間稼ぎ的な印象を強く感じた。
 試合でも同様でご都合主義的な解決が多いので、初期からライバルとして設定されていたであろう高校の試合でも消化試合化を感じるものも多く、ベスト試合を選べと言われると困るファンも多いのではないだろうか。

■通しての感想。
「極力、解りやすくすること」
「極力、勝負の「勝ち」によって面白くする事」

 この二つに特化した結果が、アニメ化するまでのヒットを産み、勝ち負けの理由の薄さもあわせ持ってしまった理由だと感じる。
 少年漫画であるが故、まず簡単に主役チームを負けさせるわけに行かない。
 負けると読者のテンションがだだ落ちしてしまうから。(優勝までに10戦あるとして、9戦目で負けると、次の大会でまた10戦しなければいけないのに付き合うのは嫌だろう)
 連載が短期に終わると、利益が小さいから、引っ張らなきゃいけない。
 これはもう連載漫画としては避けれないものだろう。
 はじめの一歩は伊達に1敗して以降無敗で試合数だけが増えていく。
 ブリーチはなんかわからぬ敵が延々沸いて出て倒されていく。
 37巻で終わったのは、綺麗に終わって良かったと思ってしまう。

 コレはもう少年漫画が少年漫画である以上避けて通れぬ呪いのようなもので、少年漫画がそれに対する解答を見つけるんじゃなくて、読者の方が卒業していくべきなんだろうと思う。

■アイシールド21の感想としては
 さすが37巻続くだけの事はあるなーと思った。
 ジャンプで読んだ時のアメリカ戦の消化試合感はすさまじかったけど、コミックスならまぁこんな物かと。
 勝利の快感(及びイヤボーン)で話を進めているんだけど、それを上手くごまかす手腕はたいしたもので。
 上記で上げた以外にも、工夫多いし。
 死亡フラグが立った瞬間に死ぬとか。
 作画がどんどんシンプルになっていったのは、個人的な趣味からは残念だけど、最近の漫画としては人体とそのデフォルメはしっかり描かれてるので読み易いし。
コミックスのオマケの多さも、作画、原作共に作品への思い入れを感じさせるのに十分で。

 ちなみに最終話の扉絵は、第一話の扉絵と構図が同じとなっていて、大作が終わるのに十分な余韻を残したと思う。
 内容も初期の内容をなぞりつつ、それぞれが成長した事を示すものだった。
 幸福な終わり方をした漫画だと思う。

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